2020/03/09
香港人事管理・ここがポイント(雇用条例編)「雇用契約解約における通知期間」
ポイント② 雇用条例編
その13. 「雇用契約解約における通知期間」
☆P商事(香港)営業所の山田営業部長は、取引先から業務縮小や撤退などの話が出てき ていることから、営業部の中でも業務が減る社員が出てきました。そこで、今日もなんといっ ても頼りになる我らポイントさんに“雇用契約解約”について尋ねてみることにしました。
山田部長 | : | ああ、ポイントさん、ちょっといいですか? |
ポイントさん | : | おはようございます。山田部長。珍しいですね、山田部長が週明け早々から香港事務所にいらっし ゃるなんて。今週はこちらですか? |
山田部長 | : | この期間の香港は、ものすごく人いやあ、ちょっとこのところ、いろいろありましてね・・・。 |
ポイントさん | : | 先行きの不透明感が増していますから、営業最前線としても苦慮されることも多いでしょう。 |
山田部長 | : | 不透明どころかお先真っ暗ですよ。特に営業3課なんですが、一番の取引先からオーダーが激減し ていまして、ちょっとこの先も目処が立たないといわれてしまって。 |
ポイントさん | : | 本当に厳しい状況なのですね・・・私を呼び止められたのは、その営業第3 課についてのお話ですね。 |
山田部長 | : | ずばり、シリアスな話です。第3課で担当している品目の取り扱い目処が立たなくなった今、課の 存続にまで話がきていまして。 |
ポイントさん | : | そうですか・・・。 |
山田部長 | : | 本当に心苦しいけれど、リストラを実行するしかないかと・・・。 |
ポイントさん | : | 今日は特に慎重にお答えしなければなりませんね。 |
山田部長 | : | でもポイントさん、香港ではウチの営業所の雇用契約書にもあるように、法定どおりの“1 ヶ月通知 期間で雇用契約を解約できる”という条項があるので、まあなんとかなりますよね? |
ポイントさん | : | 社員からの依願退職の場合であれば、そのとおりの解釈といえるでしょう。今までもご経験あったと 思いますが、社員から1ヶ月前の退職願いが出れば、基本的に会社はそれを受け入れるだけです ね。その時の、最終給与の計算は去年改定された“過去12ヶ月の支給状況”を基に算出される平均 月収額から日当や時給を割り出し、未取得の年休などがあればきちんと計算し買い取ってやること は前にもご説明しましたね。 |
山田部長 | : | 確か・・・ |
ポイントさん | : | しかし今回は、会社からの雇用契約解除、余剰人員の削減(Redundancy)ですから、会社側として 考慮すべき点は人員整理のコスト面ばかりではありませんよ。会社は人員削減の必要性を充分確 認し、また、対象社員の雇用条件と雇用状況の両方について把握しておかなければなりません。ま た、これらは労働基準のみならず差別条例にも照らし、注意事項を守りながら対応する必要があります。 |
山田部長 | : | 注意事項・・?! |
ポイントさん | : | はい、まず原則1としては、絶対極秘で対応することです。 |
山田部長 | : | ええ?話しちゃったらまずい?でも、突然そんな話になったら社員のショックが大きいので、やっぱり 少しずつ事情などを説明しておいたほうがいいのかなあ・・・と思っていた矢先・・・ |
ポイントさん | : | そのお気持ちはよ~くわかります。でも、ここでは我慢してください。もちろん、今まで同じ会社で共に 苦労してこられたわけですから、少しでも早く社員に伝えて理解してもらいたいとお考えのことでしょう。 |
山田部長 | : | そう。それに、直接取引先から情報をキャッチしているから、僕が話さなくてもなんとなく状況は把握 できる部分というのもあるし、社員同士も敏感になっているような・・・ |
ポイントさん | : | もちろん社員は敏感ですから、不安でいっぱいです。だからこそ、まずは、冷静に計画を立てていか ないと、その他の部署や課にまで影響を与えかねません。何よりまず①契約終止日を決定しなけれ ばなりませんね。 |
山田部長 | : | タイミングねぇ。年末となるとダブルペイの時期でまずいとか聞いたことがあるけれど。 |
ポイントさん | : | 年末年始は、香港の人達の国民性を考慮すると心情的には避けるべきかもしれません。しかし、香 港の雇用条例では、雇用契約書に「ダブルペイは支給しない」と明記されていない限り、ダブルペイ については、いつ解雇になったとしても、在籍期間に応じた按分計算で支払われると規定されてい ます。法で定められた社員の受給権利はどのタイミングで解雇されても変わりません。 |
山田部長 | : | なるほど・・・ |
ポイントさん | : | それから、②対象社員の“雇用契約書”で入社日を確認します。その他にもすべての人事記録ファ イルにも目を通します。ここまでは、自主的に退職する社員と同じです。次に③解雇に伴う遺産費 (Severance)ですが、雇用解除までに24ヶ月以上就労している社員が対象です。先に割り出した平 均月収と②で確定された勤続年数を端数までを以って計算し、一旦会社が全額負担して対象社員 に支払い、支給証明書を以って強制退職金(MPF)のプロバイダーに通知し、会社の拠出金からの 返金を受けます。 |
山田部長 | : | サベーランスとなると、マネージャーのブライアンは20年近くになるって言ってたから、それはちょっと 大変な金額になっていますね!? |
ポイントさん | : | もちろん平均月収によって個別に計算するわけですが、マネージャーレベルになると高額にはなりま すが、サベーランスの上限はHK$390,000と設定されています。 |
山田部長 | : | そうですか・・・。 |
ポイントさん | : | また、原則の2ですが“傷病を理由に病欠中ではないか、妊産婦ではないか?”ということも重要で す。傷病や出産育児で休んでいる社員を対象社員に入れない方が無難といえます。 |
山田部長 | : | ああ、以前にも説明してもらいましたよね。 |
ポイントさん | : | 最終給与についは、できるだけわかりやすく説明する必要があります。このほかにも雇用の終止を 通知する書面を用意し、対象社員に一人ずつ面談して通達できるように準備を整えます。そこで、 原則1に戻りますが、山田部長、このような正式な説明の前に、不確定なリストラについての内容や 条件を世間話の中であっても、うっかり社員に話してしまわれないように気をつけてくださいね。社 員同士は互いに大変影響されやすい存在です。不安感が関係ないところまで伝染してしまったり、 また、山田部長が恩情と考えられて、個別に付けられる条件などは、在籍社員に対して広まるなど、 収集がつかなくなる恐れがありますよ。 |
山田部長 | : | 私の口が堅いのを知らないんですか、ポイントさん?まあ、いつもビール飲んだだけで人格が変わ ると言われているので、無理ないですが。口は慎むよう心がけます。それにしても今日のポイントさ んは厳しい! |
ポイントさん | : | いいえ、山田部長、厳しいのはこの私ではなくご時勢ということです。 |
山田部長 | : | ほんとに・・・ |
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