2020/03/05
香港人事管理・ここがポイント(雇用条例編)「香港のダブルペイとボーナスのもつ意味」
ポイント② 雇用条例編
その11. 「香港のダブルペイとボーナスのもつ意味」
☆P商事(香港)営業所では、毎年12 月に入ると総務部の社員が挙って事務所のクリスマス の飾り付けを担当し、また、社員パーティーを開催しています。毎年年末はこのように、日を 追うごとに社員のホリデームードが高まっていく季節。しかし、その一方、山田営業部長はち ょっと浮かない顔つきです。それもそのはず、上半期とは様子が変り、下半期の売り上げが 落ち込んでいて、このままでは、年間予算達成が難しいかもしれません。しかし、今年も年末 には、ダブルペイの支給や、人事評価の結果を受けた業績ボーナスも支給されることにな っているので、ますます頭が痛いようです。急激な経済の変化に備え、これからの報酬制度 を今後どうしていくべきか・・・、今日もやっぱり頼りになる我らポイントさんに聞いてみるこ とにしました。
山田部長 | : | 今年の香港のクリスマスは、観光客が溢れて、盛り上がり方が半端じゃないようですね? |
ポイントさん | : | 中国大陸からの旅行客にとっては、西洋の一大イベントであるクリスマスがとても新鮮に映ることで しょうね。その上中華風味で味わえる香港ですから、今年も“自由行”(中国からの団体旅行団)が 押し寄せていますね。 |
山田部長 | : | なるほど、中華風味。クリスマスイルミネーションにサンタじゃなくてドラゴン模様があったりしてね。 |
ポイントさん | : | 例年でしたら山田部長が一番元気な忘年会の季節、ちょっと浮かないご様子ですか。 |
山田部長 | : | この間、ポイントさんのカラオケの誘いをたった一回断っただけで、もうそんなウワサですか?でも、 実際、営業部では、クリスマスモードで浮き足立ってはいられないんですよ。下半期の売り上げの落 ち込み方が激しくて・・・ |
ポイントさん | : | 今は、工夫と辛抱の時かもしれませんよ。気が抜けませんね。 |
山田部長 | : | 香港では、業界で勝ち組と負け組みがはっきりしているね。毎週木曜日から週末に掛けては、レスト ランは予約で一杯。夜はタクシーも捕まえられない状態。まるでかつてのバブル期みたい・・・ |
ポイントさん | : | 本当ですね。そろそろボーナスシーズン、社員の期待も高まりますね。 |
山田部長 | : | そりゃ、まずいですよ。世間を見ないで現実を見てほしいもんだなあ。そうそう、ポイントさん、前から 聞こうと思っていたんですが、ウチは、どうしてダブルペイと業績ボーナスの二本立てで支給してい るんでしょう? |
ポイントさん | : | それは、香港営業所設立の長い歴史の中で、まずはダブルペイを支給していたところ、やはり、社員 のモティベーションを上げるため、社員のパフォーマンスを考課して、会社の業績と合わせたボーナ ス制度を導入してきたからですね。 |
山田部長 | : | パフォーマンスボーナスは、いいと思ってるんですけど、今は、急激に市場が変化し、予想どおりに いきませんよね。だから、ダブルペイのような固定費に繋がる制度はもう時代遅れじゃないかと・・・ |
ポイントさん | : | いろいろな考え方がありますから。でも、今までの報酬制度を変更するには、全社員への説明と、ま た、正式に同意してもらうことが必要となります。特にダブルペイについては、香港におけるその特 異性を充分理解しなければなりません。 |
山田部長 | : | 特異性? |
ポイントさん | : | そうです。 まず、香港のダブルペイとボーナスは、全くの別物です。 |
山田部長 | : | どちらも年末支給のボーナスってことで、名称が違うだけではないの?! |
ポイントさん | : | そうではありません。香港では、雇用主がダブルペイを支給しない場合には、ダブルペイが支給され ない旨、雇用契約書に明記しなければなりません。支給する場合には、逆に明記しないでももちろ ん大丈夫ですが。また、支給しない場合には明記されていないと、ダブルペイが支給される会社で あると理解されてしまうのです。 |
山田部長 | : | 引っ掛けみたいなルールだなあ。 |
ポイントさん | : | これがダブルペイの特異性でして、香港では、ボーナスではなく給与の一部として受け止められてい ます。ダブルペイという意味は、社員の年収を13ヶ月で割って、その内の1カ月分を年末前に月給額 と合わせて支給するので、ダブルで支払われるとしてものです。 |
山田部長 | : | そういう意味なんですか・・・ |
ポイントさん | : | ダブルペイは、このように、本来、業績や社員のパフォーマンスにあまり左右されない類の収入でそ の支給が保証されてなければなりません。 |
山田部長 | : | ・・・と言うことは、ダブルペイの支給を変更、ボーナス支給へ一本化するということは・・・ |
ポイントさん | : | この道理からすると、ダブルペイ支給を廃止することは、問題となってしまいますね。 |
山田部長 | : | そうか・・・ |
ポイントさん | : | どうしても廃止する場合には、13で割らず12ヶ月で割って、月給を調整し、年収を確保してから、ボー ナス支給への一本化するような方法が、どうしても必要となりますね。 |
山田部長 | : | ああ、だから、13ヶ月分は当然の権利。ダブルペイが支給されるまでは、社員は転職をちょっとがまん しても必ずもらわなければという心理が働いているわけですね。 |
ポイントさん | : | そうですね。 |
山田部長 | : | そうそう、香港のサラリーマン、その鉄則は“損しない!”でしたね。 |
ポイントさん | : | また、ダブルペイの支給時期は、香港にとっても合理的なスケジュールですし・・・ |
山田部長 | : | 合理的なスケジュール? |
ポイントさん | : | そうです。ダブルペイの支給タイミングは、香港の個人所得税納税シーズンへと続いています。そこ で、ダブルペイで支給された金額を、横滑りさせて納税分に当てようと見込んでいる社員も少なくあ りませんから。 |
山田部長 | : | なるほど!それって、まるで香港政府の横綱相撲ってことですね。 |
ポイントさん | : | 香港政府の横綱相撲? |
山田部長 | : | 取りこぼしはありません・・・ってね! |
ポイントさん | : | 上手い! |
Pasona Asia Co., Limited パソナアジアカンパニーリミテッド
TEL: 852-2882-3913 (日本語ライン), Fax : 2890-8553, E-mail : hrmhk@pasona.com.hk
17/F., Ashley Nine, 9 – 11 Ashley Road, Tsim Sha Tsui, Kowloon, Hong Kong